クレームの事実と要望を切り分けてから動く
読んでも分からない長文が届いたとき
クレームのメールや申し立て書を開いて、3回読んでも要点がつかめないことがあります。
原因は、文章が下手だからではありません。書いた人が怒っているからです。
怒りを含んだ文章では、起きた出来事・その人の感情・求めていること・過去の別件の話が、**時系列も無視して一つの段落に混ざります。**これは自然なことで、責める話ではありません。
しかし受け取った側は、**対応を決める前に仕分ける必要があります。**そして多くの場合、仕分ける時間がないまま「とりあえず謝罪」に走ります。
それが、後から最も問題になる動き方です。
対応を決める前に、3つに分ける
1. 起きたと書かれている事実
相手が「こういうことがあった」と主張している内容です。
**「事実」ではなく「事実として書かれていること」です。**この区別が重要です。相手の主張が正しいかどうかは、この段階では分かりません。
2. 相手が求めていること
謝罪なのか、返金なのか、再発防止なのか、担当者の交代なのか。
**長文クレームで、要望が最後まで書かれていないことは珍しくありません。**怒りを伝えることが目的になっていて、何をしてほしいかが書かれていない。この場合、要望が不明であること自体が重要な情報です。
3. 確認しないと判断できない点
こちらの記録を見ないと分からないこと、他部署に聞かないと分からないこと。
ここが対応の起点になります。
なぜ「とりあえず謝罪」が危険なのか
事実関係を確認する前に謝罪すると、こちらに非があることを認めたと解釈されます。
とくに次のような場合、後から取り返しがつかなくなります。
- 実際には相手側の操作ミスだった
- 契約上、こちらの責任範囲外だった
- 主張されている事実自体が、記録と食い違っていた
だからといって、対応を遅らせるのも問題です。多くの場面で、受付の連絡は早いほうがよいとされています。
矛盾しているように見えますが、両立します。
「ご連絡ありがとうございます。内容を確認のうえ、改めてご回答いたします」
**事実関係を認めずに、受け付けたことだけを伝える。**この初動と、裏側での事実確認を分けて進めるのが実務的です。
そして裏側の事実確認を速く始めるために、最初の仕分けが要ります。
実際のクレームと、整理後の形
受け取った文面(例)
先日購入した商品について、まったく納得がいきません。
3月に注文したものが届いたのが4月に入ってから。
そもそも注文時に「5営業日でお届け」と書いてあったはずです。
しかも届いた商品は、説明にあった色と違っていました。
前回注文したときも似たようなことがあり、そのときは
担当の方が丁寧に対応してくださったのですが、
今回は問い合わせても3日返信がありませんでした。
こちらも仕事で使う予定があって購入したのに、
結局間に合わず、別のところで買い直すことになりました。
この対応が御社として通常なのでしょうか。
マカセルンで整理すると
マカセルン powered by AXIOM の「問い合わせの整理」に貼り付けると、次の形に分かれます。
起きたと書かれている事実
- 3月に注文し、商品が届いたのは4月に入ってから
- 注文時の表示は「5営業日でお届け」だったと主張
- 届いた商品の色が、説明と違っていたと主張
- 問い合わせに対し、3日間返信がなかったと主張
- 過去にも同様のことがあったと主張
- 業務で使用する予定があり、別途買い直したと主張
相手が求めていること
- 明示的な要望の記載はない
- 「この対応が通常なのか」という問いかけがあり、対応方針についての説明を求めていると読める
確認しないと判断できない点
- 注文日・出荷日・配送完了日の実際の記録
- 注文時の納期表示の内容
- 商品の色に関する説明表示と、出荷した商品の実際の仕様
- 問い合わせの受信日時と、返信までの実際の経過時間
- 過去の注文履歴と、そのときの対応記録
この出力の使い方
「確認しないと判断できない点」が、そのまま社内で調べるべき項目のリストになります。
上長に上げるときも、このリストがあれば話が早く進みます。「クレームが来ました」ではなく、「この5点を確認すれば対応方針が決められます」と言える状態になります。
そして「要望が明示されていない」ことも、重要な情報として記録されます。
「明示的な要望がない」ことが分かる価値
上の例で、相手は何をしてほしいかを一度も書いていません。
これは長文クレームで非常によくあります。そして、受け取った側が勝手に要望を推測して動くことが、二次クレームの原因になります。
- 返金を求めていると思って返金を提案 →「金の問題ではない」と怒らせる
- 謝罪を求めていると思って謝罪 →「謝ればいいと思っているのか」と怒らせる
要望が書かれていないなら、確認するのが正解です。
「今後の対応についてご希望がございましたら、お聞かせいただけますでしょうか」
マカセルンは書かれていない要望を推測しません。「明示的な要望の記載はない」と返します。これは物足りない出力に見えますが、推測で埋められるよりずっと安全です。
マカセルンが判定しないこと
明記しておきます。
非がどちらにあるかは判断しません
「こちらに責任がある」「相手の誤解である」といった判定は行いません。
理由は単純で、判断には社内の記録が必要だからです。注文履歴、出荷記録、表示内容、対応ログ。これらはクレームの文面には書かれていません。
書かれていない情報をもとに責任の所在を判定することは、推測そのものです。
原因や再発防止策は生成しません
クレーム報告書には「発生原因」「再発防止策」の欄があることが多いと思います。マカセルンはこの欄を埋めません。
原因の特定には、事実確認が必要です。確認前に原因を書いた報告書は、事実と異なる内容が社内に残ることになります。
謝罪文は作りません
「問い合わせの整理」で返ってくるのは、整理された事実と要望です。謝罪文やお詫びメールの文面は作りません。
クレーム報告書への転記
多くの会社で、クレーム報告書のフォーマットは次のような項目になっています。
| 報告書の項目 | マカセルンの出力との対応 |
|---|---|
| 受付日 | 自分で記入(メールの受信日) |
| 発生場所・対象 | 「起きたと書かれている事実」から転記 |
| 顧客情報 | 自分で記入(入力時は伏せることを推奨) |
| クレーム内容 | 「起きたと書かれている事実」から転記 |
| 相手の要望 | 「相手が求めていること」から転記 |
| 発生原因 | 確認後に人が記入(マカセルンは埋めません) |
| 対応内容 | 対応後に人が記入 |
| 再発防止策 | 人が記入 |
**上から4つ目までは転記できます。**そこから先は、事実確認と判断が必要な欄です。
よくある失敗
失敗1:事実確認の前に謝罪する
受付の連絡と、非を認めることは別です。「内容を確認のうえ回答します」は謝罪ではありません。
失敗2:要望を推測して動く
書かれていないなら聞く。推測して外すと、二次クレームになります。
失敗3:感情の部分を記録から落とす
「怒っている」という事実も、対応上は重要な情報です。**ただし、要約するときに感情と事実を混ぜないでください。**分けて記録します。
失敗4:上長に生の文面をそのまま転送する
長文をそのまま転送すると、上長も同じ時間をかけて読むことになります。整理してから上げるほうが、判断が速くなります。
失敗5:整理を対応の代わりにする
整理は対応を決めるための準備です。整理して満足せず、確認事項を実際に調べてください。
向いているケース・向いていないケース
向いている
- クレームの一次受けをしていて、上長へ上げる前に整理が必要
- 感情的な長文を受け取り、どこが要点か分からない
- 対応方針を決める前に、事実だけを社内で共有したい
- 現場と本部の間で、話が食い違ったまま進むのを防ぎたい
- クレーム報告書の作成に時間がかかっている
向いていない
- どちらに非があるかを判定してほしい(判定しません)
- 謝罪文を作ってほしい(作りません)
- 原因や再発防止策を出してほしい(生成しません)
- 対応方針そのものを決めてほしい(無料の整理では行いません。有料の「一次対応の方針整理」が対応します)
注意していただきたいこと
個人情報の扱い
**クレームの文面には、相手の氏名・連絡先・住所・購入履歴が含まれることがあります。**入力内容はAIモデル提供元のAPIへ送信されます。
**氏名や連絡先の部分は削除してから渡すことをおすすめします。**事実と要望の整理に、個人を特定する情報は必要ありません。削除しても結果はほとんど変わります。
とくに、**健康状態や身体に関する記述が含まれる場合は、取り扱いに特別な配慮が必要な情報にあたります。**入力を避けてください。
詳しくはマカセルンに会社の情報を入れてよいか|入力していいもの・避けるべきものをご覧ください。
出力の確認
「起きたと書かれている事実」の欄を確認してください。
この欄は、相手の主張を整理したものであって、確認済みの事実ではありません。社内で共有するときは、「相手の主張」であることが分かる形にしてください。
**「〜と主張」という書き方が出力に含まれるのは、この区別のためです。**社内共有の際にこの表現を消さないでください。
よくある質問
Q. 謝罪文やお詫びメールを作れますか。
A. **作れません。**整理するのは受け取った内容です。
Q. こちらに非があるかどうかを判断してくれますか。
A. **しません。**判断には社内の記録が必要で、それはクレーム文面には書かれていません。
Q. 原因や再発防止策を出してもらえますか。
A. **出しません。**原因の特定には事実確認が必要です。確認前に原因を書いた報告書は、事実と異なる内容を社内に残すことになります。
Q. 相手の個人情報が入っていても大丈夫ですか。
A. **削除してから渡すことをおすすめします。**事実と要望の整理に、個人を特定する情報は必要ありません。
Q. 対応方針まで決めてほしいのですが。
A. 無料の「問い合わせの整理」では行いません。初動の方針を整理するのは有料の「一次対応の方針整理」が対応します(単品¥980・税込・買い切り/月額プラン¥2,980・税込・自動更新の対象)。
Q. 電話で受けたクレームにも使えますか。
A. 使えます。**応対中に取ったメモを渡してください。**ただしマカセルンに録音・文字起こし機能はありません。
Q. 無料ですか。
A. 問い合わせの整理は無料7機能の1つです。アカウント登録もカード情報も不要で、回数制限もありません。
まとめ
- 長文が読めないのは文章が下手だからではなく、感情と事実が混ざっているから
- 対応前に3つに分ける。①起きたと書かれている事実 ②相手が求めていること ③確認しないと判断できない点
- 「事実」ではなく「事実として書かれていること」。この区別を社内共有でも消さない
- **事実確認前の謝罪は避ける。**受付の連絡と、非を認めることは別です
- **要望が書かれていないことは、それ自体が重要な情報。**推測して動くと二次クレームになります
- マカセルンは非の所在・原因・再発防止策を判定しません。謝罪文も作りません
- クレーム報告書は**「クレーム内容」「相手の要望」まで転記でき、「原因」以降は人が記入します**
- 氏名・連絡先は削除して渡してください
- 無料・登録不要
事実を切り分けたあと、初動の方針を組み立てる仕事も任せられます。
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