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作業範囲の線引きを、口頭で終わらせない

「ついでに」が断れない本当の理由

進行中の案件で、こう言われることがあります。

「ついでに、これもお願いできますか」

たいていは小さな依頼です。1時間で終わる。断るほどのことでもない。そう思って引き受けます。

そして3回目くらいで、気づきます。最初に見積もった工数を、とっくに超えている。

このとき、断れなかった理由は「気が弱いから」ではありません。断る根拠が手元にないからです。

「それは範囲外です」と言うには、**範囲が文字になっている必要があります。**口頭の合意しかない状態では、相手も悪気なく「含まれている」と思っています。そして双方の記憶は、それぞれに都合よく残ります。


範囲は3つに分かれる

作業を仕分けると、実際には3種類になります。2種類ではありません。

1. 依頼に含まれると読める作業

契約書、見積書、打ち合わせ記録から、含まれると判断できるもの。

2. 追加になりそうな作業

同じ資料から、含まれないと判断できるもの。

3. どちらか判断できない作業

ここが実務でいちばん重要です。

資料を読んでも、含まれるとも含まれないとも言えない作業。これが必ず出ます。そして揉めるのは、ほぼこの3番目です。

1番と2番は、判断がつくので揉めません。揉めるのは、双方が自分に有利な方向で解釈できる領域です。


判断できないものを「判断できない」と記録する意味

多くの人は、仕分けを2択でやろうとします。含まれるか、含まれないか。

**その結果、曖昧なものを無理にどちらかに入れてしまいます。**そして、たいてい「含まれる」側に倒します。揉めたくないからです。

3番目の欄を作ると、この無理がなくなります。

「判断できない」と記録されたものは、確認すべき対象になります。今すぐ決着をつける必要はありません。相手に確認するか、次の打ち合わせの議題にすればよい。

曖昧なまま作業を始めるのと、曖昧だと分かったうえで始めるのは、別のことです。


実際のメモと、整理後の形

手元のメモ(この程度で十分です)

E社 Webサイト制作 進行中

契約時の話:
・トップと下層5ページのデザイン+実装
・原稿は先方支給
・写真は先方支給(素材購入が必要なら別途)

その後に出てきた依頼:
・「トップのバナー、月1で差し替えお願いできますか」
・「問い合わせフォーム、項目追加したい」(契約時は基本項目のみの話)
・「スマホで見たときの崩れ、直してほしい」
・「原稿、こっちで用意できないので書いてもらえませんか」
・「公開後の簡単な修正は対応してもらえる想定でした」

マカセルンで整理すると

マカセルン powered by AXIOM の「見積の前提整理」に貼り付けると、次の形に分かれます。

依頼に含まれると読める作業

  • トップページおよび下層5ページのデザインと実装
  • スマートフォン表示の不具合修正(実装の範囲内と読める)

追加になりそうな作業

  • トップバナーの月次差し替え(契約時に継続作業の記載なし)
  • 問い合わせフォームの項目追加(契約時は基本項目のみ)
  • 原稿の作成(契約時は先方支給とされている)

どちらか判断できない作業

  • 公開後の修正対応(契約時に公開後の扱いについて記載がなく、「簡単な修正」の範囲も未定義)

ここで注目していただきたい点

「スマホの崩れ」が「含まれる」側に入っています。

実装の一部と読めるためです。これは引き受けるべき作業として扱えます。

一方**「公開後の修正」は判断できない側に入りました。**先方は「対応してもらえる想定でした」と言っており、こちらは契約書に書いていない。どちらの記憶も間違っていない可能性があります。

この1行が、次の連絡の内容になります。

公開後の修正対応について、契約時に範囲を定めておりませんでした。 公開後○か月間、○時間までを含む形でいかがでしょうか。

**「含まれません」と突っぱねるのではなく、決まっていなかった事実を共有して、今決める。**これが現実的な着地だと思います。


断るためではなく、決めるために使う

この整理は、依頼を断るためのものではありません。

実務では、追加作業を引き受けること自体はよくあります。問題は、引き受けたことが記録されず、工数だけが増えることです。

整理した結果は、次のどれかに使えます。

判定 取る行動
含まれる そのまま対応する
追加になりそう 追加として見積を出す、または「今回はサービスで」と明示して引き受ける
判断できない 相手に確認し、今決める

**「今回はサービスで対応します」と明示して引き受けるのは、有効な選択です。**黙って引き受けるのと違い、次回同じ依頼が来たときに「前回はサービスでした」と言えます。


小さな追加ほど記録が必要な理由

大きな追加依頼は、誰でも見積を出します。問題は小さいほうです。

1時間の作業を5回引き受けると5時間です。しかし1回ずつは「断るほどではない」ので、記録も残りません。

そして**5回目に「なぜ遅れているのか」と聞かれたとき、説明する材料がありません。**追加を引き受けた記録がないためです。

**小さな追加こそ、記録だけは残してください。**請求するかどうかは別の判断です。


よくある失敗

失敗1:範囲を「常識」で判断する

「普通これは含まれるでしょう」は、**業界・会社・人によって違います。**常識は根拠になりません。

失敗2:口頭の合意で済ませる

「それは別ですよね」「はい」で終わらせる。**双方の記憶は必ずずれます。**一言メールを送るだけで、記録になります。

失敗3:曖昧なものを「含まれる」に倒す

揉めたくないので引き受ける。**その判断自体は悪くありません。**問題は、判断したことを記録しないことです。

失敗4:契約書だけを見る

実際の範囲は、契約書・見積書・打ち合わせ記録・メールのやり取りの全体で決まります。契約書に書いていない合意は、メールに残っていることがあります。

整理するときは、契約時の話と、その後のやり取りを両方渡してください。

失敗5:揉めてから整理する

問題が起きてから範囲を確認しても、**そのときには双方の立場が固まっています。**着手前、または追加依頼が出た直後に整理するのが効きます。


向いているケース・向いていないケース

向いている

  • 進行中の案件で「ついでにこれも」と頼まれることが多い
  • 受注時の話と、実際の作業内容がずれてきた
  • 外注に出す側で、委託範囲を書面にする必要がある
  • 小さな追加を断れずに積み重ねている
  • 制作・開発・工事など、範囲が曖昧になりやすい業種

向いていない

  • 契約上どちらが正しいかを判断してほしい(法的な判断はしません)
  • 追加分の金額を出してほしい(金額は出しません)
  • 契約書を作ってほしい(作りません)
  • 定型作業で範囲が明確(整理が不要)

注意していただきたいこと

法的な判断はしません

**どちらの主張が契約上正しいかは判断できません。**マカセルンが行うのは、書かれている内容から読み取れる範囲の整理です。

契約の解釈が争点になる場合は、有資格者に相談してください。

出力の確認

「含まれると読める作業」の欄を、契約書や見積書と突き合わせてください。

ここに誤って入った項目は、本来請求できたはずの作業を無償で引き受けることにつながります。

確認すべき点はAIの出力をそのまま使ってよいか|送る前に確認すべき5点に整理しています。

顧客情報の扱い

案件のメモには、相手の社名・契約内容・金額が含まれます。入力内容はAIモデル提供元のAPIへ送信されます。

社名を「E社」に置き換えても、整理の結果はほとんど変わります。契約金額は、整理に必要なければ渡さないでください。


よくある質問

Q. 契約上どちらが正しいか判断してくれますか。

A. **しません。**法的な判断は行いません。整理するのは、渡された文章から読み取れる範囲です。

Q. 追加分の金額を出せますか。

A. **出せません。**金額の算出は行いません。

Q. 契約書を作れますか。

A. **作れません。**書類の作成機能はありません。

Q. 見積を出す前の段階でも使えますか。

A. 使えます。ただし観点が違うため、見積を出す前に、前提の抜けを洗い出すに分けて書いています。

Q. 「判断できない」が多く出た場合はどうすればいいですか。

A. **それは資料が足りていない状態です。**契約書だけでなく、見積書・打ち合わせ記録・メールのやり取りも含めて渡してください。それでも判断できない項目が、本当に決まっていない部分です。

Q. 範囲が決まった後の段取りも組んでもらえますか。

A. 無料の「見積の前提整理」では行いません。受注後の手順を組むのは有料の「受注後の段取り整理」が対応します(単品¥980・税込・買い切り/月額プラン¥2,980・税込・自動更新の対象)。

Q. 無料ですか。

A. 見積の前提整理は無料7機能の1つです。アカウント登録もカード情報も不要で、回数制限もありません。


まとめ

  • 断れないのは気が弱いからではなく、範囲が文字になっていないから
  • 仕分けは3つ。①含まれると読める ②追加になりそう ③どちらか判断できない
  • **揉めるのは3番目。**2択にすると、曖昧なものを無理に「含まれる」へ倒すことになります
  • 断るための整理ではなく、決めるための整理です
  • 「今回はサービスで」と明示して引き受けるのは有効な選択。黙って引き受けるのとは違います
  • **小さな追加ほど記録が必要。**請求するかは別の判断です
  • 整理には契約時の話とその後のやり取りを両方渡す
  • 法的な判断・金額の算出・契約書の作成は行いません
  • 無料・登録不要

範囲が決まったあと、着手までの段取りも任せられます。

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